僕は生きているだけだった/中村 くらげ
温かい布団は息もせず
脈を打たない抜け殻だ
窓ガラスが凍ったら
鍵もかかっていないのに
外には出られない
石油ストーブの声がした
気だるそうに歌っていた
喉が渇いたぞとぴいぴい泣いて
そのうちに眠ってしまった
僕は生きているだけで
指先の冷たさに苛立っている
カタカタとキーボードを叩いている間は
とんでもなくみっともない姿である
なりふり構わずに生きるのを
邪魔しているのは自分で
ネクタイを緩めるタイミングがいつまでもわからずに
僕は生きているだけだった
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