おとぎばなし/
そらの珊瑚
火がないのに
いつでも
沸きたてのお湯が出てくる
昔、むかし
食卓の上に
魔法瓶という魔法があった
ただいまと
帰ってくる
冬のこどもたちのために
とても温かい飲み物が
瞬時に作られる
カップから生まれる湯気たちが
小さな顔のまわりで
ふわふわおどる
まるで
あそんで、あそんで、と
まとわりついてるみたいに
夜がやってくると
その魔法は静かに効力を失い
湯気たちは
水に
魔法瓶は
ただの瓶に
母は
くたびれた人間の女に戻った
戻る
編
削
Point
(23)