親指姫とベンジャミン/ベンジャミン
た。お風呂は想像以上に大変で、うっかりすると親指姫はすぐに溺れてしまう。石鹸の味も早々に覚えてしまい、風呂から上がるとしきりにぴくぴくしていた。それを見ながら、ふと思い立った僕は、マニキュアを探し出すと抵抗する親指姫の背中にマニキュアを塗った。僕はとても満足だったが、それを見ていた母は不安そうな顔をしていたし、当の親指姫はシンナーですっかり青ざめていた。寝るときになって、久しぶりにうきうきしている自分に気づいた。一人寝の寂しさなんて言うまでもないことだから、別に変なことは考えてないよと親指姫に囁いたら、何のことかわかりませんと言われてしまった。
次の朝。
親指姫は、ただの親指になっていた。
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