ベルカ/opus
 
顔を顰める
その頭を撫でる

「ゴメンな」
そう犬に謝る
お前にとっては
素晴らしい主人だったのだろう
サックスの音が鳴り響く
尻尾が股の間に張り付いている
コトリ、と氷が溶ける

その瞬間、
犬が立ち上がり
歯を剥き出して
襲いかかる
懐から拳銃を抜き出し
腹を穿つ

犬が弾け飛ぶ
グラスが割れて
水と氷が霧散する
ダラダラと血を流しながら
ヨロヨロと立ち上がる
黒々とした目が
俺を写す

「あぁ、そうか」
そう思うと同時に
拳銃を咥え
引き鉄を引いた

ガラスの破片が頬に刺さる
スーツが血とウィスキーに塗れる
音が遠のく
霞む景色の中で
犬が静かに眠りにつく

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