殺されるひととすれ違う(1/2)/吉岡ペペロ
つに殺される」
あたしには意味がよく分からなかった。
「あたしは殺さないけど、きょう美智に〈すれ違っただけの刑〉みたいなことされた気はする」
あの嫌な感触が胸にもどってきた。
「あなたのこと推薦したよ、超推薦しといたよ」
頬杖をついて真帆ちゃんがあたしを見ていた。
「山田さん、ありがとうございます、がんばります」
「真帆ちゃん、でいいよ」
「そんな、真帆ちゃんなんて」
真帆ちゃんの薄茶色のひとみをあたしは見つめ過ぎていた。
「推薦、推薦」
「わかりました。真帆ちゃんでいきます」
あたしたちは二度めの乾杯をした。
こんなことってあるのだろうか。話がうますぎやしないか。いや、あまりにも企業に相手にされなくて自信をなくしていただけで、本来のあたしに気づいてくれるひとに出会えただけのお話なのかも。
「どんなとこをもっとアピールしたらいいですかねえ」
「いまからうちで練習する? 」
「いいんですか」
真帆ちゃんが領収書を書いてもらっている間、あたしはこのまたとないチャンスに立ったままふわふわしていた。
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