○/時々
とっておきの場所があるから行こう
と、きみが言った
灰色のただの壁をつたって行くと
一ヶ所だけ淡く彩られていた
羽根の形に縁どられた中に
大ぶりの花がいくつも描かれている
きみは優しく笑うと
そっと壁にもたれた
その姿は
ちょうど羽根が生えたようで
まるで初めからきみの物だったかのようで
ぼくは何も言わず
ただ見つめていた
ないまぜになった
感情に
揺さぶられながら
きみがいなくなってから
ぼくも
あの日のきみのように
こうして
そっと もたれてみる
雲ひとつない空には
右も左もない
目を閉じれば
上も下も関係ない
ただの入れ物と化した身体を手放して
気づいた
あの日 きみは 生まれた
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