詩の存在意義/鷲田
 
世界に逃れようとする。

その時、言葉によって構成された詩の存在意義が出てくる。例えば会社で嫌なことがあった時、家庭が上手くいかなかったとき、人間関係で苦労した時、金銭上の悩みがあった時など、それらの困難は詩的世界感に染まることで忘れ去ることが出来る。新たな世界観は現世の世界観を忘却させ、癒すのである。

人の人生は楽なものではない。それはどれだけ社会が成熟していようと、経済的に恵まれていようと、何かしらの矛盾や否定感を背負って人は生きているのである。そのため、ありきたりの表現の詩であっては現実の世界から逃れられず、それでは、現実の世界を生きることの困難から逃れられることは出来ない。そこには、言葉による飛躍的な表現が詩には必要であり、言い換えれば、新たな世界への入り口となる言葉が必要なのである。その世界観を描くことにこそ人生や社会における詩の存在意義があるのではないのだろうか。
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