最愛の人/たけし
 
林檎の甘酸っぱい匂い
鼻腔いっぱい広がる広がる 
一日中肉引き裂かれる激痛と闘い
夜に進んで解放され
冷水求め冷蔵庫開ければ
懐かしい匂い 君の匂い

君はいつも
なぜか仄かに林檎の匂いして
林檎と分からず只意識漂わせ
抱き合っていた抱きしめていた
二十代のあの頃、君 寝入るまで

今の僕は
独りで生きて
独りで営む生活病苦
いつか消える が いつ消えると
ハッキリ見えて来始め 覚悟は自ず

それでも
この匂いは
消えないだろう

夢見ない熟睡の底
君が君の道筋を辿り
崇高な思念に輝いている
その残像響きは余りにも鮮やか

また出逢うのは三千年後か

林檎が朦朧とした意識を引き締めて
耐えて独り在ること
生動スル時間のヒトコマだと
漂う匂いにコトバ携える


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