ウェヌス遠景/ただのみきや
ミルフィーユ仕立て高層マンション
晴れとも曇りともつかない冬ぞらに
めりこんだ白い実体は陽炎にゆれて
二十年前には無く二百年後にも無い
むすう むすうのカゾクが
はすう はすうのヒトリが
コドクの連綿が自動ドアをくぐりエレベーターをのぼり
くだりドアをあけてしめてとおく放物線を想いえがいて
垂直に
らっかして―――――――――――――――――
限りなく引き伸ばされた
露 光 速 度
あみあげられるいのちのまゆだまにおおわれ
塔はただ塔としてむすうの空白を抱
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