願い/たもつ
雨の粒たちが描く
池の波紋を見ながら
保育園からの帰り道
娘は赤い小さな傘をさして
唇をぎゅっと結んで
最近、娘の話題といえば
明日の遠足のことばかり
弁当のおかずの注文とか
当日の集合時間とか
加奈ちゃんと手をつないで行くことだとか
明日は雨のち晴れの天気予報
帰ったら照る照る坊主でも作ろうか
出かかった言葉は
そのまま飲み込み
雨かもしれないね、と
夕食の間
娘はひととおり今までのおさらいをし
私と女房はいい加減うんざりし
いつもより1時間早く寝かせると
女房は弁当の下準備を始め
私は娘のビー玉で
照る照る坊主を作るけれども
頭だけが小さくて
窓を開ければ
相変わらずの雨模様
それでも
若干、雨脚が弱まったように見えたのは
多分気のせい
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