小指/あおい満月
(ダレカダレカ解放シテクレ、
コノアツクルシイホドノ抱擁カラ)
私は時々、
私を抱きしめている、
この腕を暑苦しく思う。
私を抱きしめている私の腕を。
この腕には沢山の鍵が掛けられている。
私の感情の奥にひそむ、
あらゆる悪を弾き飛ばす、
この腕の鍵を。
いっそ、
悪に染まれたら、
しあわせかもしれない。
けれど、
私のなかの、
十字架がそれを赦さない。
この世界の、
あらゆる悪を悉く叩き潰せ。
声が蝉になって響き渡る。
大丈夫、このフロアには
聴こえていない。
正しくあるべき、
善であるべき、
声がはっきりと肉体を現す。
私にしか見
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