無題/こたきひろし
の上から外れて落ちた。
私は茫然と眺めていた。
そして間もなく我に還った。
井戸のなかを覗き込むと、底はふかくふかく暗くて何も見えなかった。
最初水の臭いはしなかったが、その内水が上がってきた。
私は死ぬほど喉が渇いていた。
もしかすると既に死んでいたのかもしれない。
生きている感覚なかったのだから無理もなかった。
私は水を両手で掬おうとした。
その時水は井戸の表面まで溢れだしていて、地面にこぼれだしていた。
喉の渇きが極限まで達していた私は何の疑いも迷う事もなく顔を近づけ口を直接水面につけた直後異変がおが起きた。
私の体が何か大きな力によって井戸に引きづりこまれてしまったのだ。
すると井戸の水は底に向かって一変に引き出した。
私は水といっしょに井戸の底に墜ちていった。
気がついたら私は井戸の底にいた。
井戸の底は羊水の匂いがした。何故私は羊水の匂いを覚えていたんだろう。
不思議だった。
私は事の真実を確かめたかった。
きっと井戸は母親の産道だったのだ。
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