無題/こたきひろし
ある日
井戸の蓋を開けなくてはならなくなった。
それは石でできた重い物のなのでひとりでは開けられない。
人に救援を頼んだが誰も井戸の存在を信じて呉れず、生憎の悪天候も災いして誰ひとり集まらなかった。
雨が降って風が吹いていた。
だからといって諦めるわけには行かなかった。
だがその理由は不明だった。
私は無理を承知で何度も蓋を開けようとした。
夜明けからはじめたが、気がついたら日は暮れようとしていた。
いつの間にか雨と風は止んでいた。空は晴れて星が出てきた。
私はすっかり体力を失い気力もなくしていた。
すると井戸の蓋が突然二つに割れた。
それから蓋は自然と井戸の上
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