kitsune/草野春心
 


  辛抱づよく 壁を背にし
  紺いろの布巾をみつめている
  とじた唇のなかで くちづけの記憶が
  解かれた積荷のようにころがっているが
  やがて堰き止められる
  いずれ壊れる(あれもこれも)
  かならず壊れる(それもこれも)
  すべからく壊れる(どれもこれも)
  意識の波を滑る枯葉 にがい木の実の味の狐
  とじた…………くちびるのなかで…………
  

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