遺書/みもる
「それじゃ」
それだけ言って
お前は部屋を出て行ったっきり
二度と戻っては来なかった
コンビニに買い物に行くように
いつものようにドアの前で
手を振って
なぜお前が消えたのか
皆は事情を問い詰める
迷宮入りの難事件でも抱えた
刑事ごっこ探偵ごっこだ
オレはお前が何も残さずに
消えた訳を知っている
オレも本当に消える時は
きっと何も残さないだろう
お前と共に過ごした日々
お前が日々口にしていた言葉
お前が日々癖でとっていた行動
お前に借りっぱなしのCD
全てがお前の遺言遺書だ
オレはこれから一生
お前に獲り憑かれて生きていく
毎日沈んで
毎日憂鬱になって
毎日死にたくなって
闇に浸るたび
お前を思い出す
でもオレはもう
独りじゃないんだ
ずっと
お前が天より高い所で
オレを見ている限り
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