ミサ/ホロウ・シカエルボク
 



だが、彼女は存在がこの世にほんの僅か引っかかった状態で発見され、病院に保護された、病室で注射と点滴を受け、駄目になった四肢は切断され、丁寧な治療が施された、一週間後の深夜、目を覚ましたミサは一晩中言語化出来ない奇妙な叫び声を上げ続け、鎮静剤を打たれてもそれが止まることは無かった、明方にどす黒い血を吐き出すまでそれは止まらなかった


それから彼女はまたも治療を受け、錯乱を防ぐための処置がいろいろと施された―状態が落ち着くと彼女の母親が病室に訪れるようになった、そして、食べるものの居ない林檎を剥いたり、聞くものの居ない世間話を夜になるまで続けた


ミサは、寒天のような目で天井を見つめ続け、ぽかんと口を開けて、腕から栄養を注ぎ込まれ、それから十年ほど生きた―生温い梅雨時の朝に、なんの予兆も無く突然、死んでいた



母親がたまたま遅れてやって来たその朝のことだった。





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