冬の空ぼど気まぐれな奴はいない/ただのみきや
 

変わりやすくて変えられない
わたしは糸のほつれた服
穴の開いた靴
古い本に挟まれていた写真
2015年12月へ溶け出した誰かの過去

鳩が喰われたように羽毛は舞い
雪はまぶたに 
跪拝をうながす

薄紅色の窒息
地下水の囁き
――ふいに焼鏝が落ちてくる

広がる亀裂に真っ赤な口紅
恥じ入ることもなく
冬の胸元に滑り込む体温計
図りながらも甘えている

そうしてオーブンで焼かれた心臓
六角形の苦いクッキーを密売する
代金も受け取らず布教する
盲人の手を引く盲人
そう 口先案内人



        《冬の空ほど気まぐれな奴はいない:2015年12月30日》








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