YOKIKANA/山田せばすちゃん
りかねます
よきかなよきかな
姉は父の病の折に
人買ひに買はれて都へ
さんざんにをとこの慰みものにされてのち
孕んだ子を始末したすえに
肥立ちもわるくそのままとか
遺骸は寺に投げ捨てられたと
命からがら逃げ歸つてきた姉の朋輩に聞きました
よきかなよきかな
はい
わたくしも嫁に出た先で牛馬の如くに働かされ
子を成せなかつたことを詰(なじ)られ蹴られ
舉句には勞咳とやら
誰もゐないこのうちに戻されまして
わづかな田畑をたがやして
どうにか息永らえてをりますが
近頃は働くどころか
立つこともままならぬ脚萎えで
おそ
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