スケッチ旅行/レタス
あの日
パステルで描いた街は何も変わらないでいた
終着駅を降り
血の止まらない人差し指を包帯で締め付け
だらだらと下る漁師町
白黒の猫がニャァと誘い
坂をゆっくりと降りてゆく
灯台までは真っすぐな坂道が続いてる
街を歩いている影はみあたらず
血を流しながらも
生きているのはぼくだけだった
医院を探したけれど
ひっそりとした街には見当たらず
再び包帯を締め付ける
坂道の途中
ぼくは石段に腰かけ
バッグからキャンソン紙のスケッチブックと
パステルボックスを取り出し
錆びた色の街と
路のはてに立つ灯台をサラサラと描いてゆく
空は鉛色と少しの青が入り混じ
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