墨塗りの夜空/凍月
口に出して言えない心に
一体どんな意味があるだろう?
渡せない恋文で屑籠は溢れ
伝えられない言葉なんて
消えて無くなって終わりじゃないか
温めた卵を踏み潰して
醜い吐瀉物が見えるだけじゃないか
水を延々と火にくべていたら
気付けば蒸発しかけてるじゃないか
紙に綴った感情はもう
軽くかさばる唯の廃棄物じゃないか
ねえ僕の心の中見えるかい?
無理だろう
だって僕にも見えないじゃないか?
純粋が今では汚れて黒ずんでいる
片思いしていたと思ってたけれど
それも
巧妙に作られた虚構だったんじゃないか?
もしも真っ暗な夜空が見えたなら
それは書き殴られたインクの跡だ
文字で埋め尽くされたから黒い夜空
もしも真っ黒な夜空が見えたなら
僕が硯をひっくり返したってコトだ
墨で塗り潰されたから夜空は黒い
もしも夜闇に空が黒く見えたなら
それは炭化した手紙のなれの果て
空しく焦がれた後の焦げ跡の夜
墨液のような雨が降る夜、空は黒かった
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