因果律/片野晃司
 
まって、それからが楽しいひととき。

めでたしめでたし、名探偵はあざやかに謎解きの説明を終えてソファーに体を沈めると、しばしの瞑目のあとで依頼人から陰惨な事件の仔細を聞かされることになるのだけれど、すぐにまた退屈、ひまつぶし、爆発、疾走、奇行、そしてまた退屈、それからまたあざやかに難事件を解決して、虫眼鏡を片手に床を這い回り、そしてまた事件発生、そしてまた退屈、それからまた事件解決、からみあった暗号をみごとに解いて、書斎の本のすきまから古びた手紙が現れて、それから依頼人がやってくる。それからまた退屈。

人間、死ねば老いる。老いていけば生きている。後悔はいつもきっかけより先立って、それから
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