引越し前夜/枝
一年で一番夜が長い日はまだ
私はこの街の住民で
ダンボールタワーの中で暮らしてる
一年で一番夜が長い日の次の日は
もう私はこの街の住民ではない
ダンボールタワーの中にはいるけれど
明日の今頃はもう
この家もこの浴槽も
私のものではない
明日の今頃はもう
私たちの生きた形跡も
無くなってしまう
今日最後だからって
わざわざ夕飯作って持ってきてくれた隣のおばさんも
明日からは他人になってしまう
どこか懐かしく感じた畦道
よく1人で通っていた小さな神社
いつも生き物がいる近くの小川
一面の田んぼに映る富士山
スーパーにいつもいる
マイ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(4)