ユニゾン/そらの珊瑚
るように歩み、寄る
最後に彼は
小学生だった私が聴いたこともないような華麗な曲を
――ふりかえってみればそれは即興曲だったかもしれない
おそらくいちぶの狂いもない音で
弾いてみせた
それまで無機質だったその指に
命が宿ったかのような豊かな踊り
私はカルピスを飲むのも忘れて魅入られた
それはいつも完結しない夏、
に行われていたようにおもう
溶けてゆく氷
グラスの表面
滴ってゆく水が
ゆっくりと落ちてゆく動画
あれは
永遠を、誰かがつなぎとめようとしていたのではないか
そんな気がして
今はもう狂ったままに時の過ぎた古いピアノを
――いずれにしても調律師がおとづれる季節は過ぎた
朝陽のような西陽の中でそっとながめている
この鍵盤を押せばどこかにつながるのだろうか
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