夜の子/光冨郁埜
 
はじめに くらやみがあって
(ここまでくるのにながい夜をくぐってきた
一枚いちまい重ねられていく
生まれるまえは
まったくの やみだったと
うすぼんやりとした 
陽だまりの まえにすわって
鍵盤を たたいている
ちいさな 私を 私はみた 

とざされた 窓を
やっとの 思いで あけても
そこにはまた とじた窓があり
その窓をあけても そのむこうに
窓が いくつもつらなっている

たゆたう くぐもった水に うかぶ 子
なにもかも 信じられずに
目を とじたまま
身を ちぢめていた

求めてみても みちたりることはなく
それでも 求めることをやめられないのは
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