(3/3)伊勢うどんをマフラーに/吉岡ペペロ
とあたしはアーヤに危ないとでも言うように声をあげた。車のヘッドライトがあたしたちを照らして去っていった。
真っ黒だった景色にコンビニの光が染み込んでいた。危ないかなと思いながらコンビニの広い駐車場に入ってベビーカーを押し歩いた。
コンビニに入ろうとすると、昼間出会った野球少年ふたりが出てきた。
「こんにちは」
こんどはあたしから挨拶をした。
「こんばんは」
少年が声をそろえて返してきた。そしてベビーカーをのぞきこみながらあたしたちの横を過ぎた。
「そうだね、こんばんは、だね」
ふりかえってそう言うと、あたしは胸にあのパワースポットのぬくもりを感じていた。あのぬくもりの気配を感じていた。アーヤの伊勢うどんをマフラーにした物まねが甦ってきた。このからだには天体が住んでいる、そう思った。それは間違いないことのように思えた。
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