(1/3)伊勢うどんをマフラーに/吉岡ペペロ
出を断ってしまった。あたしは手のひらでアーヤの首まわりを温めた。アーヤがまだ諦めきれないようすだった。こんなことはよくあること。それが優しさなのか真実なのか、つぎの目的地までバスに揺られながら考えていた。
あたしは職場の改善提案で会社から最優秀賞をもらって副賞の旅行券を手にいれた。
いつもアーヤの面倒をみてくれている母に友達と温泉旅行にでも行っておいでよと渡そうとしたのだが、母が遠慮した。アーヤとおまえが行っておいでよ、わたしは家でのんびりさせてもらうよ、母にそう言われてあたしは言葉がつまった。そんなの無理だ。アーヤに旅行なんて無理だ。アーヤとふたりきりで出掛けたことも最近では数えるほ
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