雪紙マイナス五度上の白詩人/千月 話子
 
説の
結末は白紙のままで
究極に達する前に逃げられる





言葉を足で踏みにじろうか
燃えさして 畑の土に蒔いてやろうか
雪上の中で冷静を保つ言葉なら育ち良く
来年の白カブは上出来だ


  完成した詩を食べ尽くす夜


傑作は発表されずに 血・肉・骨 で
いつもいつも 腹の中だ!






食べ過ぎた詩 溜め過ぎた言葉
未完成さえ人目に触れず
胃がキリキリと痛む深雪の朝
降りしきる雪に足を取られて
転がる衝撃に 破裂した
胃袋から溢れる血と言葉のほとばしる
白い雪紙に完成された詩歌の歓び
文字化けした所々を
除雪車が掬って行くのを
遠い目で追いながら
人々の集うざわめきと歓喜を聞いて
白い詩の 燃え尽きた詩人よ
あなたの残した数編が
あなたの名前だ!





と 誰かが叫んだ。





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