踏み荒らし/高原漣
 
踏み荒らし


老いた敗残兵の話を聞いてくれ

君よ

剣の川を泳いで渡れるか

しょせん一発の弾丸

マグネシウムのように命を燃やし

かっ と光っては消える若さよ

おびただしい死が雪崩をうって転がりこむ惑乱の巷で

明滅する友たち

ああ、また心臓が動くをやめた

また、息をするのをあきらめた者がいる

マゼランからシリウスまで渡り歩いたが

どこまで行ってもわれわれは螺子でしかなかった

か黒い水たまりに浮かぶ光球が

またたくまに後方へ流れ飛ぶ

ふいに舷窓は全くの灰色となり

艦は星雲の波間にしずむ

次に目覚めた時
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