スイッチ/ただのみきや
 
スイッチだ日常の点けて弄ぶ消しても眠らない
壁を這いまわる夜にふやけた未発声の《》は過呼吸のまま乳房を求め
夏の光に目隠しされた幼い逢引と声の影法師
皮膚下の水脈を辿る山椒魚のふるえ蔓草が覆う戦闘機の残骸
うっかり踏んだ骨の感触を口に孕んで――
義足に過ぎない文字の「カシャリ」とか 「グシャリ」とか
頭の裏側に刺さる白い欠片を舌は蛇のように結びまた解いた
釣り針の口角手紙のように微笑みは重なり合いやがて四季となる

浮島では犯される理想が五感で秒読みした土砂降りの
肉片と黒煙の匂いが組み込まれることを拒み続ける
鈍く反射する記憶のそう深くない場所の銀色を
漂う海月は色もなく
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