孤独/ベンジャミン
なキズに
爪をたててみる
また
記憶が湧いてくる
病室のベッドの下には
自分の物ではないスリッパがあった
誰も履かない
履く人など居ないのに
重さに耐えかねたような形をしている
点滴の音が
肌に食い込んでいる
混ざってゆくのがわかる
手首を眺めて
傷痕を探す
見当たらない
過去だ
ただの記憶だ
静かだ
爪痕のようなキズを
引っ掻いてみる
カリ カリリ
音が剥がれて
驚いてあたりを見回す
部屋の戸が閉まっている
誰が閉めたろうか
カーテンを
誰が縛ったろうか
爪痕のようなキズを
誰がつけたろうか
誰が・・・
誰が・・・
見つけるだろうか
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