砂浜/そらの珊瑚
 
こころもとなくなる
ここを歩いているといつも
どうしてか
砂地には
足跡は残せず
一本の根さえ張れないと思うのだ
ほってごらんと
父は言った
ほりだすそばから
哀し水がしみだし
確かに刺したはずの一本の心棒さえかしぎ
四方から壁がやわらかく崩れおちてくる

それでも
いくつかの眼(まなこ)をひろうことができるだろう
それらが人につながっていたころ
外界にさらされた内臓として忙しくしていたが
ここへ墜落した眼(まなこ)は円を保ちつづけ
夜も朝も昼も
そのどちらにも属さない通過点でもやすむことのない
貪欲な時間のような波に洗われて
今はただ瑞々しい寂寥だけを映している

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