風の呼びかけ。/梓ゆい
ひゅう・・・・。ひゅう・・・・。と身体を切り裂く夜風。
ひゅう・・・・。ひゅう・・・・。と父を迎えに来た。
ひゅう・・・・。ひゅう・・・・。と地底の底から唸りを上げて。
死んだらどうなるのか?
目を閉じてもぐる布団の中。
嘘をついた私の足を地獄の鬼が掴む。
(ごめんなさい。ごめんなさい。と泣いた小学校1年生の夏休み。)
ひゅう・・・・。ひゅう・・・・。と肌を刺す夜風。
ひゅう・・・・。ひゅう・・・・。と手の甲が赤く染まる。
ひゅう・・・・。ひゅう・・・・。とあかぎれをなぞり上げて。
特急電車の中で食べた弁当。
野菜の煮つけを一切れ食べて
「父ちゃんが作ると尚更上手い。」とそっくり残す。
ひゅう・・・・。ひゅう・・・・。と駅舎に吹く夜風。
ひゅう・・・・。ひゅう・・・・。と一層強くなる。
ひゅう・・・・。ひゅう・・・・。と心を冷やし
ひゅう・・・・。ひゅう・・・・。と疲れた足を急き立てる。
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