初対面のふり/深水遊脚
 

「苦手なものはなかった?お酒も珈琲もいける?」
「大丈夫だよ。お酒もOK。不味い珈琲は苦手だけれど、この珈琲なら飲める」
「そう、よかった。服はこの籠に入れて。タオルはこれを使って。」

そう伝えて風呂場の脱衣所のカーテンを閉めた。バスタオルを巻いたまま、チキンとポテトを少しお腹にいれた。

 高校生のときのよくわからない序列や、些細な出来事の記憶なんて、所詮は誤解まみれでねじ曲げられたもの。一度全部棄てて、相手はもともと知らない初対面の女の子だと思ってこの2時間を過ごそうと思った。昔話は自分からはしない。友達の消息とかそんなのも聞かない。これは聞き返されると困るからでもあるけれど。
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