夕焼け/藤原絵理子
キャベツを刻む 0.5mm できるだけ薄く
手間と時間がかかる 何のために?
きみが喜ぶ顔を見たいだけ ウソつきのあたし
なけなしの時間を使う理由があった
小さく手を振った 改札から流れ出る人波
少しうつむいて歩いてくるきみが
あたしを見つけたときの顔が好きだった
必要とされている なんて思えた
さりげないフリをしていても 期待していた
気づいてくれなくても 自分を憐れんで
あたしの気遣いは あたしの中だけで回っている
せっかくの夕焼けが冴え渡るのに
ほの暗い蛍光灯の下で キャベツを刻んでいる
まだちゃんと さよならが言えてない
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