耳/
あおい満月
を持たず繰り返す日常に
意味があるのか。
死んだもの、
死にかけたものを、
針の先で抉じ開ける動作そのものに
快楽はひそむと信じている。
まだあたたかだった、
指先をなぞる歴史が
モノクロに胸を掠める。
世界が灰になる前の肩を
握ってくれたのは
嗄れた血管の浮き出る諸手。
今も繋がれている、
微かに見える稜線を手繰りながら、
私は手を合わせる。
あなたに、
今度は迷いなく出逢えますように。
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