最初で最後の、樹氷が見る夢/ホロウ・シカエルボク
んなふうに思っていたころのこと、考えようによっちゃ、夢が叶ったんだ、コーヒーをもう一度口にしたかった、後悔といえばそんなことぐらいだった、ああ、凍てつく音が首元まで迫っている、もう心臓は止まってしまったのだろうか、メタルマシーンミュージックが高らかに鳴り響いて、もう上手く考えることすら出来ない、両耳を貫くように、金属音が―
温度が失われ、なにもかもが氷に食われてしまった、もがき苦しむことすら出来なかった、朝食のテーブルに右肘をついて、何事か大事なことを思い出そうとしたみたいな姿勢のままで、おれはひっそりとした樹氷になって死んでしまった、窓の外では朝日が輝いている、何もない世界を美しく照らす、ソプラノのような澄んだ朝日が―
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