最初で最後の、樹氷が見る夢/ホロウ・シカエルボク
冬の風に冷えた鋼鉄が、花の記憶を掻き消す、すべては結晶化してしまい、現実として機能するには足りない、なにもかもが完璧に足りない、朝食のスープはほんの少し食べるのを忘れていただけで表面が凍りついてしまった、ほんの少し焦げたトーストももう氷柱のようだ、ラジオはエヴァネッセンスを流している、こんな朝に、こんな朝にどうして、そんなものを?空気が動くたびに耳の中で金属音がこだまする、凍てついてしまう宿命の朝、窓の外はすでに支配されていた、零下の街、動かないことがいちばん美しいことなのだ、ベッドに戻りたかった、せめてあたたかい夢を見ながら眠りにつくために、だけどそんなものはもうどこ
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