スダチ「巣立ち」/
花形新次
搾りたかった
何にでも
搾りたかった
握力はまだ
いくらでもあった
さんまでも
松茸でも
唐揚げだって
刺身だって
みんな
スダチだった
それが徳島だった
だから
きみが東京に行くと
言い出したとき
心配の余り
汽車のきみに向かって
袋一杯のスダチを投げ入れたっけ
きみの巣立ちに
こんなに相応しいものは
他にないと思って
(スダチ詩集「辛気臭い奴はレモン好き」より)
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