名残雪/天野茂典
 
  夜半
  電灯灯に映る
  雪の姿に
  ぼくはあなたの
  薔薇になれるか
  聞いてみた
  答えはイエス
  あなたの胸に飾られて
  ぼくはあなたを侵食して行く
  あなたの赤い傘と
  まいちるぼくの白い傘
  あいだに春を挟んで
  シーソーのように
  均衡をとりながら
  次第にぼくが侵食し
  あなたは夜半の雪になる
  そうしてぼくは薔薇になる
  砕けて散って
  音楽になりながら
  また春が来る季節の
  終末が
  電灯の下に
  ふぶき
  積もってゆく
  もう薔薇は病んではいない
  狂気から遠いところにいる
  名残雪
  であってほしいと
  暖かい部屋の中で
  雪景色を眺めている


              2005・02・18



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