空白/鷲田
 
覚えている 山の色、海の匂い
夕焼けの中、一緒に遊ぶ隣の家のお兄ちゃん
記憶は遥か遠く、遥か遠くに居て 瞬間に迫りくる

過去は止まり、描写は言葉を忘却している
感情の色を失くし、刻む脳裏の中を
私に空白は無い 私は空白を失った 
私は色に染められている 私は色に染められた 

君は私の過去を吸い込む 何も知らず、何も知ろうとせず
まだ君には記憶が無く、存在を主張するエゴイズムが無い
君は空白だ 君はいつだって透明だ

君が興味があるのは りんごが赤いとか
君が語るのは ご飯が上手いとか
君が質問するのは 秋には何が咲くかとか

君の見える景色はありのままで

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