歌が聞えてくる/ただのみきや
雪のような歌がある
静かにふってきて
いつのまにか景色を一変する
真新しい一面の白紙を前に
こころ躍らせる者
昨日を忘れてしまい
ペンのように立ち尽くす者
雪のような歌がある
太陽のような歌がある
閉ざされた湖は微笑みを取り戻し
魚は躍り飛沫を上げる
草花の庵
風のテーブル
誰かの素足を見つめている
ただ受け取っていたい
太陽のような歌がある
扉の隙間から暗い明かりが漏れている
そんな歌がある
すすり泣く旋律
開いた傷口を激しくこすりつける詞
背けても耳にまといつく
悲色の糸が心を縫い付け
いつしか心中したくもなる
厄介だけど憎みきれな
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