すり替え/千波 一也
わたしの味方は誰だろうか、と
指折り数えて
早々に
ぴたりと
指は止まる
味方と信じて疑わない
あいつや
あいつが
まさか
本当のところは
敵意を抱いていまいか、と
いとも
たやすく
信頼に影を落とすことができる
言動について
表情について
噂について
わたしの
指は
数える役目を再開する
なんの
確証もない裏切りを
不意の
一時の
出任せの感情にしたがって
次々と
思い浮かぶ顔に
当てはめる
「良かったね、わたしの指よ」
「数える役目がなくならなくて」
わたしの味方は誰だろうか、と
わからないものを
探す途中で
わたしの敵に違いないはず、の
わからないはずの
わからないゆえの
実数に
支配されてしまう
ときどき
欲にあらがえず
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