グルタミン酸/藤原絵理子
きれいな人が 大きな昆布の束を抱えて
ピアスの石が イルミネーションに煌く
街のざわめきの中で 抱えなおした昆布の音が
雪が舞っている 北の海の潮騒に重なる
あたしは帰りに寄ったスーパーで
真っ白い 京都のお豆腐を買う
お湯の中で広がった昆布の上に
たぷんと 浮かんだ湯豆腐を想像して
淋しげな瞳は
ビルの明かりを映しながら
暗い海を見ている 少女の頃の記憶
無頓着に 昆布は白い粉をふいて
ウィーンの宮殿で見た ドレープに変身する
マリー・アントワネットの ドレスの裾に
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