雲をこねて、波を泡だてる./
梓ゆい
父が居ない家の中では
死ぬ間際まで着ていた半纏が
簡易ベットの上で持ち主を待っている。
不気味なほど明るい白一色の空模様は
渦を巻きながら雪をちらつかせ
波が立つように吹く風は
茶色一色の庭を通りすぎて
「行きたくない。」と柱に掴る父の魂を
閻魔の命により連れ去った。
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