裏地のないスカート/はるな
 

もういいじゃん
バッグが空
よごれてきたけど
樽も空
ついさっき出荷されたのたちが
残していった空気をぜんぶ肺に詰めて
それで忘れないってことにできたらどんなに素敵だろう

なんどもとりかえた靴底がまた擦り減って、
なんどもとりかえた名前も垢だらけになって、
なんどもくる薄まった朝や昼や夜たちが、
もういいじゃんって言ってくる。
だからそのたびにわたしが
違うよたぶんもう遅いから
もっと空を集めたほうがいいんだよってこたえてる

こたえる、テレビドラマに
こたえる、携帯電話に
こたえる、ドアに
ドアたち、愛しいドアたちに
旅立っていったドアたち、ドアた
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