雪雲/千波 一也
雪をふらせる雲を
「ゆきぐも」と呼ぶのだ、と
あなたに教えられて
それが
すっかり
気に入ったので
つい独り言してしまう
「あれは雪雲だろうか」と
冬をうつした窓辺で
わたしがすきだったのは
あなたの教え方だった
「ゆきぐも」の響きもいいけれど
それをすきになったのは
いつだったか
どうしてだったか
覚えていない
あなたの
雪をふらせそうな体温なら
ようやく忘れかけた
近ごろだけれど
あなたがついた
真摯な嘘に息づく季節に
ほんとうの季節に抵抗するように
わたしは
呼んでいる
雪雲を呼んでいる
もう、
後悔さえもまとえずに
ただ呼んでいる
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