お父さんのお葬式。/梓ゆい
 
姿があって欲しいと期待をして。

最後の日
「抜け殻になったんだよ。」と耳打ちをした母は
受け入れようともがいていたに違いない。

ほんの少しだけ舞う雪が
父の抱擁の変わりに
母と私と妹を包み込んだ。

(受け入れてしまえば、幾分かは楽になっただろうに。)

失った恋・叶わなかった希望・いつの間にか消えていた友人/知人たち。
それらを理解した時に
覚えた落胆と諦めを思い出して。

それでも
次々に愛する誰かを送り出さなければならない。
どの位続くか解からぬ人生の中で。

そのときはきっと
悲しみの中に感謝を添えて
菊の頭を棺に納めるのだろう。

父の遺影を眺め
「大切にしなさい。」と言う事が
理解できたのなら。

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