三角からす/オイタル
向こうの林の梢の上に
三角からすを止まらせて
昨日のぼくの ろくでなし
あしたに恃む すべもなし
雲にまかれた梢の陰に
三角からすを潜ませて
(三角からすっていうのがいるんです。羽が三角で、眼もくちばしも三角。嫌いな奴は嫌いな顔立ちだな。で、そいつがうちの家の前にだらしなくぶら下がる電線やら立ち枯れた杉の梢やらが好きで、ずっと止まっている。止まっているのか生えているのかどうなのか実はよくわかんないけど、尾を振ったり羽を研いだり、随分身勝手に止まっている。隣にいる友達なんか、蹴とばしたりして。嘘です、それはきっと、僕です。)
風を揺さぶる梢の下に
三角からすをぶら下げて
ぼくの負い目も 君の縫い目も
どうだかちっとも 見当たらない
朱に染まった梢の裏に
三角からすを急がせて
泣いていようが ぼくの恋
しぼんでいようが ぼくの恋
夜も近づく梢の奥に
三角からすを沈ませて
細かい雨の中をひそひそ
乗る人のない夜色のバス
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