ガラガラ/あかり
ん・・・」あたしはできるだけ謙虚に聞こえるように言った。
「あら!ほら○○さん、私達邪魔みたいよ!ごめんなさいねぇ。うふふ」ごめんなさい、と言ったその言葉に全く誠意が感じられなかったのは、あたしの根性が相当悪くなってしまったせいだろうか。あたしは軽く一礼し、ほんの僅かあけられた隙間をカートで突き進む。
豚肉、ウインナー、たまご、サラダ油・・・
カゴにつめられてゆく食品たち。カートは重くなる。ガラガラと鈍くなってゆくカートのタイヤの音。
ガラガラ、ガラガラ。
この音は、なにかが崩れてゆく音なんじゃないだろうか。
ガラガラ、ガラガラ。
女として、結婚する前には確かにあったもの。
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