ひとしれずゆくえしれず/ただのみきや
 
目が口ほどにモノを言う人たちに囲まれて
君の視線のフィラメントが闇のように漂う
人見知りがひとり 見知らぬ人たちと
待合室でチェスの駒みたいに包囲され
遠くから黙々と頭を打つ冷たい秒針は亡霊だった
アストロノート症候群の発作が窓を叩く激しく叩く
鳴らない鐘のように蓄積された君を
円錐の水晶の頂点に静止して
脳はレスキューする
オオムラサキの翳るように素早い色彩の氾濫が
空(くう)を時から解き放つだろう
やがてスロットマシーンがしゃべりだし
瞬いたり見開いたり記憶のカルタを読み上げる
あざ笑う声もなくあざ笑う声が一斉に蕾をつけた
琥珀の瞳に溺れてもがく蟻のように
ありふれた孤独の中に沈んで往くもうひとつの孤独
堪能して 内も外もいっぱいにして
自分を何段にも切り離し 君は堕ちて往く
宇宙に穿たれたブルーホールへ
椅子に抜け殻をきれいに揃えたまま



              《ひとしれずゆくえしれず:2015年11月27日》




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